今回の山行は、梅雨の合間の晴れに期待して計画したもの。当初は、八ヶ岳の西岳・権現岳・赤岳・阿弥陀岳の周回プランを予定していたが、週間予報が思わしくないので、梅雨前線から遠い新潟の谷川岳主脈縦走計画に急遽変更した。
ところが新潟も天気がはっきりせずで、出発前日17時の「山の天気予報」で決めることにした。が、願いも空しく予報は曇りと雨の予報になってしまった。断腸の思いで、スモーキーさんに中止を告げる。
金曜夜になって気象庁の予報がややいい方に好転した。複数の天気予報もいい方に触れている。どうも前線が予定より南下する様だ。これは行けると判断して、急遽スモーキーさんに打診。行くことが決定した。
土曜朝の相模原はどんより曇っていたが、谷川岳麓の土合に着くと、空は晴れている。我々の読みは間違ってなかったと意気揚々と登山口へ。
まずは西黒尾根からの登り1200mをこなす。西黒尾根は日本3大急登と言われる。スモーキーさんは。残りの黒戸尾根、ブナ立尾根全て踏破している。大体3大急登というのは長くてつまらない道が多い。今回もできればロープウェイで行きたかったが、谷川岳主脈踏破の画竜点睛を欠く気がして、あえてここから登る。
▼西黒尾根登山口はいきなりの急登だ。
登り始めは、ブナ林の急登を登る。多少の変化をつけつつ予想通りの地味に樹林帯を登る。ここまでは予想通りの展開。
1時間ほど登ると急に樹林が開けて、岩場の急登に変わってきた。お、なかなかいいじゃんとスモーキーさん。ここの岩場は蛇紋岩で、非常に滑りやすい。蛇紋岩は、かんらん岩にプレートの滑り込みなどによる水分の供給で変成した岩とのこと。
▼ここから樹林帯を抜け視界が広がる。
人に踏まれた所がツルツルになり、ヤバイくらいに滑る。幸いここの登攀では、手で掴みやすいガバと言われる手がかりが豊富なので問題はない。我々パーティは、歩くのは遅いが、沢登りで鍛えているので、こういうところで手こずることは少ないのだ。
▼見た目以上に滑る蛇紋岩の壁。
▼有名な蛇紋岩の一枚スラブ。
天気の方は、午後に雨が降る予報であったが、正に雨に向かってまっしぐらな感じになって来た。ガスが山頂方面を覆い、風が強くなってきた。
楽しい岩場登攀の後、ミニ雪渓をこなすと、山頂直下に出る。荷物をデポして谷川岳の山頂へ。双耳峰の手前トマの耳だけで今回はお茶を濁す。
▼山頂(トマの耳)は、ガスの中。
肩の小屋に降りてきて軽く昼食。汗冷えと外気温の低下で急に寒気がして来た。中間着を追加して、いよいよ主脈稜線へ。谷川岳は、馬蹄形縦走というのと主脈縦走の2つの大きな縦走路があり、後者の方を今日やるのだ。
いつもなら肩の小屋からは、これからゆく稜線がくっきりと見えるはずだが、今日は全くのガスの中。盛り上がらないこと甚だしい。明日天気が改善することに期待して、強風の中稜線へ下る。この天気の中、こっちへ向かうのは一体何組いるのか?
▼ガスと強風の中、主脈へ突っ込む。
今日は、肩の小屋から250mほど下った後、オジカ沢の頭に150m登り返し、その後100mほど下った鞍部にある大障子避難小屋に泊まる予定。(すれ違った人などの情報によると、この稜線を西に向かっているのは、我々含め3組ほど。1組は大障子より先に行ったと思われる)
下ること20分。強風とガスに加えて雨も降って来た。降り出すのは15時頃と思っていたので2時間ほど早い。先を急がないと。
するとなんとなんとガスが晴れてきた。目の前にオジカ沢の頭が、後ろに谷川岳が、そして周辺の山々が一気に姿を現した。小屋までの我慢の時間が一瞬して楽しい稜線歩きに時間に変わる。雨はさほど強くない。
▼うお~。ガスが取れてきたぞ~。
スモーキーさんといいね、いいねと語り合いながら、稜線をゆく。谷川岳主脈は、全部で7つの大きな山を越えてゆく。一つの山を越える度に、次の山が姿を現す。目の前の山頂に向けて歩を運びながら、頂上から次にどんな山が姿を現すのかをワクワクしながら登ってゆく。これが谷川岳主脈の楽しみのひとつだ。
オジカ沢の頭にたつと、眼下に大障子避難小屋が見える。あと少しだ。
小屋まであと10分くらいのところから雨が強くなってきた。急げ。
▼オジカ沢の頭。
▼雨の中、大障子避難小屋へ。
14時、小屋到着。先客はソロ登山者が1名。10名定員という避難小屋だが、どう見てもそんなには入れない。というのも、小屋の左の壁から雨漏りがしていて、床の左50センチくらいは使えない状態だ。小屋内に波板が何枚か置いてあり、それを使って雨が床に飛び散らないように細工する。これでなんとか3名分のスペースを確保。小屋内に装備しているテントを使って、マットの下地を作る。この小屋は、土間がないので、床の上を土足で歩いている感じで、床には泥がうっすらと溜まっている。テントを床に敷くことにより快適な環境を作ることが出来た。窓がないので暗いのかと思ったら、ドアの明かり取りが結構でかいので、意外に明るい。
▼小屋の中はこんな感じ。
雨具を着ているうちにと、小屋から往復20分という水場に水を汲みに行く。途中から笹の藪漕ぎになり、その先の水場が見つけられるかどうか自信が持てなかったので、水汲み中止。それぞれあと1リットルくらいで明日を凌ぐことになる。
雨は暴風雨というくらいになって来たが、夜には上がったようだ。早々と18時前には寝てしまったのでよくわからない。
2人とも夏仕様のシュラフで多少寒かったが、熟睡して朝を迎える。4時半起床。天気は快晴だ。これは嬉しい誤算。予定を少し早めて出発することにする。
▼朝4時。奇跡の晴れ。谷川岳稜線の朝焼け。
同室の鎌倉から来られた方が、出発間際に水を500mlプレゼントしてくれた。ありがたい。
鎌倉さんの後を追って、5時40分我々も出発。まずは、大障子の頭を目指す。笹の中の道を朝露にパンツを濡らしながら行く。
▼小屋前で記念撮影。
この稜線の面白いのは、笹の広がる稜線が続くなか、時折現れる岩場や左右が切れ落ちた痩せ尾根。爽快感とスリルの稜線だ。
▼大障子の頭に来ると、万太郎山がドドン。
▼こんないやらしい下りもある。
8時20分、万太郎山到着。主脈の中間地点にして最深部だ。360度の展望が広がる。
▼この日はベニドウダンツツジがそこかしこで満開。
▼越路避難小屋付近。エビス大黒の頭と仙ノ倉山が見える。
エビス大黒の頭で大休憩。誰もいない。山頂を独り占めが大好きだ。この先の仙ノ倉山、平標山は、湯沢方面からの登山者で大混雑なのが目に見えてるので、ここが本日最後の静かな山頂となる。
▼エビス大黒の頭で大休憩。さすがに疲れが‥
一旦下って仙ノ倉山への最後の急登だ。
予想通り仙ノ倉山は、人でごった返している。前回来た時は早朝だったので誰もいなかった。
▼仙ノ倉山。鎌倉さんと記念撮影。
仙ノ倉から平標への稜線は、2年前に誰もいない早朝に来た時に比べて、人がずっと続いていてなんか違う。主脈の旅の楽しみは、仙ノ倉山が実質ゴールだったようだ。
▼ハクサンイチゲが満開!
▼平標山頂直下。
水汲み兼ねて平標山の家経由で下山。バスで越後湯沢駅まで。
駅に着いたら土合駅まで戻る電車まで後20分。蕎麦なら食べられるかとへぎ蕎麦屋へ。
10分で出てくる?と聞くと、無理という答え。それじゃダメと席を立とうとすると、最低6分かかる。10分の約束はできないという。スモーキーさんが、トライして見ましょうと言うので、待ってるとジャスト10分で出てきた。
そこからは、2人前のへぎ蕎麦を2人で早食い競争。私が蕎麦つゆにネギを入れている間にスモーキーさんが2束を食う。やばい出遅れた!最後はやさしいスモーキーさんが、わたしに一束を残してくれて、早食い大会は引き分け。この間わずかに1分。電車には余裕で間に合う。
最後は、素敵な車掌さんの電車で土合に帰還。すばらしい山行は大団円となりましたとさ。
▼あくまでも被写体の主役は電車とのこと。撮影者談。